はじめに:銀行が知りたいのは「あなたの未来」
皆さん、こんにちは。 『住宅ローン審査の教科書』、2章の授業を始めます。
前回の1章では、住宅ローン審査が「属性」「個人信用情報」「物件」という3つの科目で構成されていることを学びましたね。
今日、私たちが深く掘り下げるのは、その中でも最も配点が高く、合否を左右する最重要科目「属性」です。
「属性」と聞くと、多くの人は「年収が一番大事なんだろう?」と思うかもしれません。もちろん、年収は重要な要素です。しかし、銀行が年収の「額面」そのものよりも、もっと、もっと重視していることがあります。
それは、「その収入が、35年先まで安定して続くのか?」という、あなたの「未来の安定性」です。
今日の授業では、銀行があなたの「属性」をどのように点数付けしているのか、その具体的な採点基準を解き明かしていきます。この基準を知ることで、あなたは自分の強みと弱みを客観的に把握し、減点を防ぐための的確な準備を始めることができるでしょう。
採点項目①:「年収」- 額面の高さよりも“中身”が問われる
銀行は、あなたの源泉徴収票や確定申告書に書かれた「年収額」だけを見ているわけではありません。その“中身”を、虫眼鏡で覗くように細かく分析しています。
【銀行はココを見ている!】
収入の安定性: 毎月決まった額が支払われる「固定給」の部分がどれくらいあるか。インセンティブや残業代など、業績や景気に左右されやすい「変動給」の割合が高いと、「安定性が低い」と判断され、審査上の年収が額面より低く見積もられることがあります。
- 銀行のホンネ: 「去年の年収は1,000万円でも、その半分がボーナスや歩合給なら、来年も同じだけ稼げる保証はないよね…」
収入の継続性(過去の実績): 「直近1年分」だけでなく、「過去2〜3年分」の収入証明を求められることがよくあります。これは、年収が右肩上がりに増えているか、それとも不安定に増減しているかを見るためです。年収が安定、もしくは増加傾向にあれば、大きな加点ポイントになります。
- 銀行のホンネ: 「去年だけたまたま年収が高かった、という可能性も捨てきれない。過去からの推移を見せてほしい」
【減点されないための準備】
- 準備①:最低でも「過去2年分」の収入証明を用意する 源泉徴収票や確定申告書は、すぐに提出できるよう、必ず2〜3年分を保管しておきましょう。
- 準備②:変動給が多い場合は「平均年収」で考える 歩合給の割合が高い人は、一番良かった年の年収で計画を立てるのではなく、過去3年間の「平均年収」を基準に、無理のない借入額を考えることが重要です。
採点項目②:「勤続年数」- “3年の壁”の本当の意味
「住宅ローンを借りるには、勤続3年以上が必要」という話を、聞いたことがあるかもしれません。これは、多くの銀行が審査の目安としている、非常に重要な項目です。
【銀行はココを見ている!】
定着性と忍耐力: 勤続年数が長いということは、「すぐに会社を辞めないだろう」という定着性の証明であり、「困難なことがあっても、仕事を続けられる忍耐力がある」という人間性の証明にもなります。
- 銀行のホンネ: 「3年も続かないようなら、35年のローン返済なんて、もっと続けられないんじゃないか?」
スキルと専門性: 同じ会社に長く勤めているということは、その分野でのスキルや専門性が高く、万が一会社が倒産しても、同業他社に転職できる可能性が高い、という評価にも繋がります。
- 銀行のホンネ: 「この人は、この道のプロだ。食いっぱぐれることはないだろう」
【減点されないための準備】
- 準備①:転職は「家を買った後」が鉄則! もしキャリアアップのための転職を考えているなら、そのタイミングは非常に重要です。住宅ローン審査を考えているなら、どんなに良い条件の転職話があっても、審査が終わり、家の引き渡しが完了するまでは、絶対に今の会社を辞めてはいけません。
- 準備②:勤続1〜2年で申し込む場合は「ストーリー」を用意する 「どうしても今すぐ家を買いたい!」という場合は、「なぜ転職したのか(キャリアアップなど、ポジティブな理由)」「次の会社で、自分のスキルがどう活かされ、将来的にどう貢献できるのか」を、理路整然と説明できる準備をしておきましょう。職務経歴書などを補足資料として提出するのも有効です。
採点項目③:「勤務先」と「雇用形態」- あなたが乗る“船”の大きさ
あなたがどんなに優秀な船員でも、乗っている船が小さく、嵐に弱ければ、銀行は不安になります。勤務先の安定性や、あなたの雇用形態は、まさにその「船の大きさ」を測るための項目です。
【銀行はココを見ている!】
- 勤務先の安定性(会社の体力): 上場企業、公務員、資本金の大きい会社、歴史のある会社などは、倒産リスクが低い「豪華客船」と見なされ、評価は非常に高くなります。逆に、設立間もないベンチャー企業や、従業員数の少ない中小企業は、「小さなボート」と見なされ、評価は慎重になります。
- 雇用形態(船員としての立場): 「正社員」は、解雇されにくく、安定した立場であるため、最も評価が高いです。一方、「契約社員」「派遣社員」は、契約が更新されないリスクがあるため、減点対象となります。「自営業・フリーランス」は、収入の波が激しいため、最も審査が厳しくなる傾向にあります。
【減点されないための準備】
- 準備①:自分の「立場」を客観的に知る まずは、自分の勤務先や雇用形態が、銀行から見てどう評価されるのかを客観的に認識しましょう。もし評価が低い要素があるなら、その分、年収や勤続年数、自己資金などでカバーする必要があります。
- 準備②:非正規雇用の場合は「専門性」をアピールする 契約社員や派遣社員であっても、看護師やITエンジニアなど、高い専門性を持ち、どこでも通用する資格やスキルを持っている場合は、その点をアピールすることで評価を好転させられる可能性があります。
まとめ:「属性」は“今の自分”を正直に伝えるための材料
今日の授業では、最重要科目である「属性」について、銀行の採点基準を学びました。
- 年収: 額面だけでなく「安定性」と「継続性」
- 勤続年数: 最低でも「3年」が目安
- 勤務先・雇用形態: あなたが乗る「船」の大きさと安定性
これらの項目は、すぐに変えることが難しいものばかりです。だからこそ、家を買おうと思い立ったその日から、計画的に準備を始めることが何よりも重要なのです。
自分の属性に不安がある人も、悲観する必要はありません。銀行は、あなたの弱みを知りたいのではなく、「自分の状況をきちんと理解し、無理のない計画を立てているか」を知りたいのです。
次回、3章の授業では、もう一つの重要な科目「個人信用情報」について学びます。「スマホの分割払い残高もNG?」をテーマに、自分でも気づかないうちに信用情報に傷がついていないか、その確認方法と対策を徹底解説します。
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